【時事メディカル】歯周病で精神障害リスクが上昇

2022年1月5日

 

 歯周病があると精神障害などさまざまな慢性疾患のリスクが上昇することが、一般診療データを解析した大規模疫学研究の結果から明らかになった。英・University of Birminghamの研究者らがBMJ Open(2021; 11: e048296)に発表。歯周炎の予防、早期診断・治療、定期的な口腔健康状態の検査の重要性があらためて強調された。(関連記事「認知症・糖尿病の要因は歯周病にあり」)

歯周病患者6万例超を解析

 研究者らは、1995年1月1日~2019年1月1日に同国IQVIA医療調査データベースに登録された一般診療データから歯周病を有する患者6万4,379例(歯肉炎6万995例、歯周炎3,384例)を抽出。年齢、性、Townsend剥奪指標、登録日などをマッチングさせた歯周病がない対照群25万1,161例を選出し慢性疾患〔心血管疾患(CVD:心不全、虚血性心疾患、脳卒中/一過性脳虚血発作、末梢血管疾患)、心代謝疾患(2型糖尿病、高血圧)、自己免疫疾患(1型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、尋常性白斑、乾癬、悪性貧血、炎症性腸疾患、セリアック病、自己免疫性甲状腺炎、強皮症)、精神障害(うつ、不安、重度精神疾患)〕リスクを比較検討した。

 登録時の平均年齢は44歳、男性43%。喫煙状況(現喫煙者30%)、BMI、人種の割合、剥奪の程度は両群で同等だった。

 登録時に慢性疾患を有した割合は、CVDが対照群7.4%、歯周病群9.9%、心代謝疾患がそれぞれ17.1%、19.1%、自己免疫疾患が6.3%、8.2%、精神疾患が19.5%、29.7%。ロジスティック回帰モデルで年齢、性、BMI、Townsend剥奪指標、喫煙状況、人種を調整して登録時の慢性疾患リスクを見ると、対照群に比べ歯周病群ではCVDリスクが43%〔調整オッズ比(aOR)1.43、95%CI 1.38 ~1.48〕、心代謝疾患リスクが16%(同1.16、1.13 ~1.19)、自己免疫疾患リスクが33%(同1.33、1.28 ~1.37)、精神疾患リスクが79%(同1.79、1.75~1.83)といずれも有意に高かった。

精神疾患リスクが37%上昇

 中央値で3.4年の追跡期間中に新規に慢性疾患を発症した割合は、CVDが対照群4.5%、歯周病群5.4%、心代謝疾患がそれぞれ8.6%、9.6%、自己免疫疾患が2.4%、3.3%、精神疾患が8.3%、11.7%。Cox回帰分析で年齢、性、BMI、Townsend剥奪指標、喫煙状況、人種を調整して新規の慢性疾患発症リスクを見ると、対照群に比べ歯周病群ではCVDリスクが18%〔調整ハザード比(aHR)1.18、95%CI 1.13 ~1.23〕、心代謝疾患リスクが7%(同1.07、1.03 ~1.10)、自己免疫疾患リスクが33%(同1.33、1.26 ~1.40)、精神疾患リスクが37%(同1.37、1.33~ 1.42)いずれも有意に高く、2型糖尿病リスクは26%(同1.26、1.21 ~1.32)高かった。

 共同筆頭著者で同大学のJoht S. Chandan氏は「英国でも世界的に見ても一般的に口腔衛生状態は不良な者が多い。口腔衛生不良状態の進行は、QOLの大幅な低下につながる可能性がある。しかし、これまで多くの慢性疾患、特に精神障害と口腔衛生不良状態との関連はあまり明らかになっていなかった。そこでわれわれは英国の一般診療データを用いた大規模な疫学研究で、歯周病と慢性疾患の関係を調べた。その結果、歯周病が精神障害などの慢性疾患リスクの上昇と関連している可能性が示唆された。歯周病患者は多いので、歯周病に関連する慢性疾患リスクの上昇は公衆衛生上非常に大きな負担となる可能性がある」と結論した。

 

続き、記事元はhttps://medical.jiji.com/news/49669

 

 

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